同人ゲーム制作の実情(2)

第二回 開発体制について

ちょっと厳しめというか、マイナス面のことを多く書きますが、
これからやる人はここを覚悟したほうがいいぞ、っていう意味を込めています。

今回は、みなさん恐らく勘違いしているであろう、同人におけるチーム制作という部分について書きます。

さて、何を勘違いしているか、というと、

「同人ゲームってみんなで意見出し合ってわいわい楽しく作ってるんだよね?」

という話です。

残念ながらそれは幻想です。

 

■ゲーム開発の幻想について

「じゃあ、つまんねーって言いながら作ってるのかよ」 って思うかもしれませんが、

実際のところを一言で言えば、「作業の1割が楽しくて、9割がつまらない」ということです。

そして、「みんなでわいわい」やりません。5人ぐらいメンバーが居たら、2人が7割の作業をして、残り3人が3割の作業をします。

で、作ったことのない人は、楽しい1割の部分しか見てないように思います。

ではその1割の部分はどんな作業でしょうか。
大体下のような部分だと思います。

・最初の企画出し →自分の妄想を好き放題語る。楽しい!
・自分の得意な作業をする →みんなに見て貰い、褒められる。楽しい!

まあ大きく分ければ、殆どこれだけです。これだけでゲームが作れたら簡単なのですが。
じゃあそれ以外の、つまらない部分の代表を上げていきましょう。

・自分の担当以外のことをする

→大体はこれ。
→新しく覚えられて楽しい部分もあるが、それ以上に学習に時間がとられる。また、どうせ本職にはかなわないという気持ちもある。
→やる気が下がってくると、なんで俺がやらなきゃいけないんだ、っていう負のスパイラルに陥る。

・自分の担当でもつまらない作業は多い。

→例えばシナリオ。プロット作業までは良くても、後々矛盾が出て来たり、アイディアが浮かばなくて止まってくるとつまらなくなってくる。
→また、最後らへんまで書き上げて、思ったよりつまらない、ということは良くある。

・出来上がるもののクオリティが低い。または自分の思っていたものと全然違う。

→これは作業自体のつまらなさというよりも、モチベーションの話です。
初心者にありがち、というか必ず通る道です。もっとクオリティ高いものが出来ると思っていたのに、だんだんと実は思っていたより難しい、現実が見えてきたときに、挫折する人が8割です。ここを超えられるかが勝負。

■人のアサインについて

ってことで、実際やってみると「わいわい楽しく」っていう状態は、
開発期間2年のうちの最初の一か月とかだけなんですね。

そうなってくると、幻想を抱いていた人は続々と辞めていきます。
最初の一か月はそれなりに楽しく会話も弾み、色々作るゲームに対する夢を語っていくので、
ちょっとは皆仲良くなってるわけで、そのあとになって「オイやっぱつまんねーぞ」ってなっても辞めにくいんですね。
なので大抵は音信普通になって消えます。

なんとか残ったメンバーも、出来れば自分の得意な作業以外はやりたくないですから、
結局はリーダーや、やる気のある人、または出来る人任せになってしまいます。

それで5人中、2人ぐらいの人に、最もつまらない作業が全部いくわけです。

つまらない作業というのは、その作業量自体は大したことなくても、
モチベーションを大きく下げて来ます。実はかなり大きい問題だと思います。

同人ゲーム制作というのは仕事ではないので、
やりたくない作業を強制的にやらせることは出来ません。
でも誰かがやらなくてはいけません。
また、締切の強制力というのも大して強くありません。
普段の生活もありますし、何らかの事情で土日が一回潰れただけで、殆ど1週間の遅れになるわけです。
スケジュールがどんどん遅れていくのは、もはや当たり前ぐらいに思ったほうがよいでしょう。
そこが非常に難しいところです。仕事でゲーム作るほうが簡単なんじゃないかとすら思います。

ということで色々強制するのは不可能だし、僕自身も強制されたくありません。
じゃあ「誰もやらない作業」や、「間に合いそうにない作業」はどうするかってなれば、
方法は2つしかありません。
自分でやるか、人を増やすかです。

今回はもう平日は仕事8時間、通勤往復2時間、ゲーム制作6時間、睡眠食事風呂8時間
という感じで、数か月走り続けるには既にギリギリのペースだったので、
人を増やすしかありませんでした。

しかしこの募集も厳しい。
ヘタに募集すれば、正直言えば本当にヘタな人が来て全体のモチベーションを下げてしまいます。
かと言って上手な人が来るのを祈って待つ余裕はないのです。「間に合わなそう」だから募集しているわけです。
そしたらお金を払って、プロに頼むのが、結局のところ一番手っ取り早いのです。
それに、無償で募集すると、途中で「やっぱ出来ませんでしたー。テヘ(はぁと」と言われても、許すしかないわけです。

ということで、当然ですがお金がかかってきてしまいます。
第一回にお金の話を持って来たのは、この話のためです。

外注してもお金が戻ってくるなら、そこまで悩まず依頼しますが、
実際はギリギリのところです。ここでまた頭を悩ませます。

結局は作成予定の素材を減らすか、お金をかけて外注するか、神に祈るか、ぐらいの選択になります。

同人の制作チームというのは常にいろんな問題を抱えています。
ここで語ったのはいくつかのケースに過ぎず、もっと楽に作っているところもあれば、
もっと過酷な状況でもなお作っているチームもあるでしょう。

これだけいろんな問題があるのは、仕事であれば第一に、「お金を稼ぐ」という目的で大抵の人の想いが一致すると思いますが、
同人ではその目的がバラバラで、「お金を稼ぐ」「スキルを磨く」「有名になる」「楽しければいい」等、
全員の目的達成に向けたゴール地点を模索するのがとにかく大変なのです。

ってことで、大変だよ!ってことしか言ってませんが、
楽しい部分は本当に楽しいからやっているのです。
言いたいのは、楽しい部分しか見ないで始めて、無責任に途中で放棄するのは止めようね。って話です。

実はここまで書いた話は、ある意味失敗しちゃってる例です。
失敗しちゃってるんだけど、無理やり続けてしまっている例。
まあそれでも完成させられるならいいんですが。
最近は楽しい5割、キツイ5割ってとこだと思います。
みんなのスキルも上がってきたからかな。とにかく最初が一番キツイ!

「同人ゲーム制作の実情(2)」への1件のフィードバック

  1. 自分を過大評価してる子供が多いからね、「あきたらやめたらいいや、マイナスないし」と気軽にやめていく
    結論として、自分で全部やるのが一番確実で早い
    声優とか自分でできない部分は声優の養成所とかに頼みに行くほうがいい
    団体の看板があるとすっぽかしできなくなるから

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